釣り糸(フィッシングライン)の科学(4):PEライン

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釣り糸(フィッシングライン)対しての小考4
PE(Polyethylene)ライン

 今回は新世代の高強力釣り糸の「PEライン」に対して説明します。
 様々なフィッシングラインがあるが、PEラインは20世紀末に現れて人気の上がった最新フィッシングラインです。
 PEラインは他のフィッシングラインとは区別される特徴があります。その特徴は現代の釣りを変化させながらその領域を広げる主な原因になりました。実際に深海の大物釣り、GTフィッシング、ジギング、エギングなどのジャンルはPEラインが無かったら今のように発展できなかったかも知りません。


PEと呼んでいるが一般的なPEではない。
 PE(Polyethylene、ポリエチレン)は化学的に一番簡単な構造の高分子で、日常生活で何時も会っています。対標的なのは色んなプラスティックケースとコンビニで使う「ビニル袋」と呼んでいるその白い袋です。ビニルだと呼ぶが本当はポリエチレンです。本当にビニルで袋を作ると伸びってしまって物を入れて手持ち出来ません。
 
  PEの化学構造      ポリエチレン顕微鏡写真
 ポリエチレンは1898年、ドイチの化学者の「ハンス・ヴォン・ペヒマン(Hans von pechmann)」が偶然発見しました。以後1930年代に工業的に合成し始め、1950年代から世界的に製品生産になりました。現在は用度によって色んな合成法が開発されていてその重合度による性質の違うポリエチレンが生産されています。成分は同じでも全然性質が違う、即ち、分子量の違う4~5種類のポリエチレンが存在します。
 普通に良く見られるのは「HDPE(High Density Polyethylene、高密度ポリエチレン)」と「LDPE(Low Density、低密度ポリエチレン)」などだが、色んなプラスティック容器に使います。リサイクルマークにも易く区別できるように書いています。
    
HDPEのリサイクルマーク     LDPEのリサイクルマーク
 フィッシングラインに使うポリエチレンは、HDPEやLDPEのような普通のPEとは違います。分子量の非常に高いポリエチレンで「UHMWPE(Ultra High Molecular Weight Polyethylene、超高分子量ポリエチレン)」と呼びます。UHMWPEは1950年代に初めて合成されました。強力な耐衝撃性と耐薬品性はもちろん吸水性が殆ど無い特性で1960年代から医療用、整形外科的な用度で多く使え始めました。
 繊維化したのは1970年代のオランダの「DSM社」です。1979年にDSM社はゲル(Gel)紡糸法による UHMWPE製造法でパーテントを取って「ダイニーマ(Dyneema)」と言う商品名を付けました。以後、日本の 「Toyobo(東洋紡績)」と提携して今まで生産しています。他にアメリカの「Honeywell社」では製法の少し違う方式でUHMWPEを作って「スペックトラ(Spectra)」と言う商品名で生産しています。
UHMWPEの主な用度は上に書いたとおり先ず医療用です。股関節、膝間接はもちろん脊柱関節など人工関節の部品に使っていて今からの展望も明るいそうです。
 以外に、プラスティック形態ではスキーやスノーボードの内部構造、機械部品などに他の素材と混合して使用します。繊維形態では防弾服、アーチェリーの弦、ヨットの帆、パラシュートの紐、海洋スポーツ用ロープの最新素材で人気です。もちろんフィッシングラインとしてもその性能は認められています。

UHMWPE製品

PEフィッシングラインの登場
 UHMWPEがフィッシングラインで使い始めたのは1990年代以後で、その歴史は深くありません。最初の使用は日本だったが、試作品からその成分を単純にPEと表示したからか、釣り人に間では普通にPEだと呼ばれるようになりました。日本の釣り業界の開発と量産の陰で、人間の力では不可能だと思われた海の大物釣りがどんどん人気になりジギングのブームも呼びました。
水深100m以上での釣りは一般的なナイロンラインを使うとラインの伸縮性の所為で釣り針に動きを伝えません。例え、ロッドを上下1m幅で動いて見てもその動きはラインの伸縮性に吸収され深海にある釣り針は全然動かないと言う事です。逆に、魚が餌を食って走っても結構走らない限り釣り人に当たりが伝えないんです。しかし、PEラインだとそれが問題ないんです。
PEラインは伸縮性が1~2%に過ぎないので伸びがほぼ「0」に近いです。
 釣り具の最大市場であるアメリカでも直ぐPEラインの生産が始まって様々な名前のPEラインが登場しました。色々なブランドからPEラインが生産されているが、その原料を見ると「Dyneema」と「Spectra」、この2種類の原糸を使って各会社が特別な加工をしている事が分かります。

PEラインの長所と短所
 PEラインは一応、「合糸」です。4合か8合撚りが殆どです。もちろん4合糸より8合糸がもっと高価で高級品です。
 PEラインの最大の特徴は何よりもその強力な引張強度にあります。同じ太さのナイロンラインと比べるとその強度は3~5倍程の強さです。また、全然水を吸収しないため長い期間使っても吸水による強度変化はありません。以外に紫外線にも影響を受けないため劣化がなく寿命は他のラインの3倍以上に見ても問題ありません。
伸縮性が殆ど無い事は、場合によって長所も短所にもなるが、深い水深での僅かな感触も直ぐ分かる事と全然ショックを吸収する緩衝が無い事がそれぞれです。
 PEラインの確実な短所は、価格が高い事(300m位なら普通のリールより高くなります)、非常に柔らかくて使う時に慣れないとライントラブルが厳しい事や縺れたラインは解け難しい事、摩擦と熱に弱い事、などです。その他にも細い繊維が集まっている合糸なので僅かな傷で表面の繊維の何本が少し切れている場合、強力な引張強度のPEラインだが、その傷の部分に負荷が集中されて嘘のように切れてしまいます。なので何時もこまめにラインの表面をチェックしなければならないです。また、伸縮性が無く滑らかなPEラインは結びが滑り易いので特別な結び方を考えるほうが良い事も短所の一つだと言えるでしょう。
 PEラインはリール用の道糸で使う事が殆どです。雷魚ルアー釣りの場合は、太いPEラインをそのまま使います(ルアー連結部分は2~4重補強)が、一般的にはナイロンかフロロカーボンのショックリーダーを繋いで使うのが原則です。PEラインの伸びない事と表面の傷による切れがショックリーダーで解決できます。

PEラインの未来
 最近のPEラインには色んな後加工処理製品も現れています。元々PEラインは比重が小さくて水に浮きますが、他の繊維と混紡して比重を調節した製品(特にエギング専用など)もあるし、柔らか過ぎる特徴をなくすためラインの表面にコーティングした製品もあります。もっと細くもっと強力にするためラインを撚る合撚方法もまた新しく開発されて同じ6号の太さでも、その引っ張り強度が26kg(50ポンド)もあるが47kg(90ポンド)の製品もあります。
値段と引っ張り強度、また値段と特殊加工による新製品の登場はしばらく続くと思います。しかし、もう強度としては極を走っていると言って言い過ぎじゃないから摩擦に強い特殊加工法とか低価格に品質の良いPEラインが現れかなとも期待しています。
約10年の前、細いが強いPEラインの登場以後、釣り具、特に海の大物用のリール、ロッド、様々なアクセサリがPEラインを使っても無理のないように変化して行きました。短い期間だったが飛躍的に発展して昔には20kgの魚が人力による釣りの限界だと言われましたが、最近には釣りの素人も40、50kgの大物を釣り上げる時代に変わりました。
 PEラインは釣りに変化を持って来てまだまだ変化をけしかけています。

댓글

익명님의 메시지…
ユウジと言います
いつも拝見させていただいています。
PEの説明いろいろ見てきましたが、一番よくわかりました。ありがとうございます。
特に最近販売されている引張り強度の高いPEの正体が織り方によるものとは、初めて知りました。
高密度ポリエチレンに何か重合させたものかハイブリットなのか??と思っていました。
高密度ポリエチレン自体かなり完成された物質なのでこれ以上の改良は難しいのではと思っていましたので、織り方で強度を出すとは目からうろこです。
夜間外出禁止令が出ていた頃、一度韓国を訪問して以来行っていませんが、韓国で魚を釣りたいですね。なだらかな山並みと渓谷の魚に憧れています。
gt-hunter님의 메시지…
ユウジ様、
私のブログをお読みまたコメントまで書いて頂いてどうもありがとうございます。
まだまだ足りない部分のある拙稿です。

夜間外出禁止令はもう26年前になくなったから本当に昔の事ですね。
何時か再び来韓してその時は釣りも楽しんでください。

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