フィッシングラインの科学(3):フロロカーボンライン

釣り糸の科学の1回は、↓
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釣り糸の科学の2回は、↓

釣り糸(フィッシングライン)に対しての小考3
フロロカーボンライン

 今回はハリスの代名詞、フロロカーボンラインに対して調べましょう。
若い釣り人からの質問がありました。
 「カーボンラインとロッドブランク素材のカーボンと何か関係がありますか。」
 「カーボン繊維でロッドブランクを作る時、その原料のカーボン繊維で糸を作るとカーボンラインになると聞きましたが、本当ですか。」
あきれ返って物も言えない事でした。それにもっとビックリした事は、ネット上で有名釣り人から教えてたと言う事・・・でした。
インターネット時代ですがドンでもないウソ情報も結構流れているから注意しなければなりません。「カーボンライン」と普通に呼ばれているフロロカーボンラインはロッドブランク材料のカーボン繊維とは全然関係ない事をもう一度、お知らせます。

*本当は「ポリフッ化ビニリデン」
 先ず、話したいのは「フロロカーボン」と言う名称ですが、実は、これは特定名称じゃなくて「炭素―フッ素結合の持つ有機化合物の総称」と言う事です。ここには樹脂じゃなくてガスもあり殆どが化学反応の余り起こらない不変の安定された化合物です。
したがって、釣り人じゃない限り「フロロカーボン=フィッングライン」と言う等式は成立できません。
じゃ、我々の釣り人のよく使っているフロロカーボンラインは何でしょうか。
実は「ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidine DiFluoride)」または「ポリディフロロエチレン(poly 1,1-difluoroethylene)」と言うもので主に「PVDF」と呼ばれています。

 PVDFは1969年の応用物理学術誌に強力なピエゾ現状(Piezoelectricity、圧電気)が報告された事からこの世に知られ始めました。そんな電気的な特長以外にも耐摩耗性、耐薬品性、耐放射線性、耐紫外線性など様々な状態で耐久性の良い特長を持っています。主に、シート状かフィルム、ボード、パイプ、糸に作って半導体の製造装置、センサー、リチュームイオンバッテリに使う事はもちろん食品工業、電子、医療用の機械部品、建物外部コーティング材などに使っています。有名な商品名として KYNAR®と HYLAR®があるが、高価だそうです。
世界的に生産できる会社が少ないと言われているポリフッ化ビニリデンをフィッシングラインにしたのは1971年、日本の「呉羽化学」が最初でした。その時、原料が「フロロカーボン」だと表現してしまってポリフッ化ビニリデンの代わりにフロロカーボンと言う名前がフィッシングラインの一つの種類として使える事になりました。
 フロロカーボンラインはフィッシングラインにしか使えるんじゃなくてクラシックギターやウクレレ、リュートなどの弦楽器の弦にも使えます。


*フロロカーボンラインの特性
フロロカーボンラインは時々ナイロンラインに比べます。表に見えるようにその特長に少し差があります。目立つ差と言うと比重が大きい(重い)事と吸水率の差です。
比重が大きいのでナイロンに比べると3倍以上早く沈みます。また水の中で長い時間過ぎてもナイロンのように水を吸収して弱くなる事がないと言うのがフィッシングラインとしては魅力的です。以外にも紫外線に強くて長持ちと言う事、光に対しての屈折率が少なくて水の中で見えない事も長所です。

<フロロカーボンとナイロンの比較表 >

             フロロカーボン    ナイロン
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
比重             1.78      1.12~1.20
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吸水率            0.01%     8~10%
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耐紫外線性         0%/1000h    50%/50h
(強度低下率)
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屈折率            1.42      1/53~1.62
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延伸率            20~30%     14~30%
             (製品差が大きい)(製品差が大きい)

 もう一つの長所があります。釣り人達は「フロロカーボンはあまり伸びないから敏感で良い」と話します。しかし、<表>に現れている延伸率を見るとナイロンと比べて大きな差がありません。疑問を持つ人がいるかも知りません。
実は、フロロカーボンラインは切れる直前までの全体的な伸びはナイロンと余り変わりません。しかし、ナイロンに比べると「初期伸度」が低いです。
この意味は何か。<グラフ>を見てください。
全体的な伸びは差が余り大きくないけど軽い荷重の掛かっている時は、伸びの差が結構ある事が分かります。即ち、同じ荷重Ⅹの掛かった時、ナイロンは「a2」伸びるが、フロロカーボンは「a1」しか伸びません。このような特性のためフロロカーボンラインは硬いライン、敏感なラインだと認められているんです。
(主:本グラフは、実際試験データーじゃなくて理解の易くなる為に作ったイメージです。)

*フロロカーボンラインの長所と短所
 このようにフロロカーボンラインは長所が多いが、短所がないとは言えません。
先ず、値段です。ナイロンラインに比べて高い事が一番大きな短所でしょう。以外に、ナイロンラインに比べて張りのある事も時によって短所です。直線性は良いが柔らかじゃないのでリールに巻いた時、スプールに馴染まなくて解け易い場合もあえいます。逆に、長い間スプールに巻いたままだと曲がっている状態がそのまま残って糸クゼ(コイルリング現状)が表す恐れもあります。
ポリフッ化ビニリデンは温度変化に強いと言われていますが、1号以下の細いラインの場合、マイナス気温ではもっと硬くなって折れるように切れてしまう事もあります。また70℃以上の熱では強度低下も大きいです。
フロロカーボンラインをリールに使う時、馴染まなくて解くからシャワーでお湯を掛けると良いと話す人がいます。これはラインを弱くする原因になるので禁止です。
 実際の釣りにおいて、フロロカーボンラインはその用度が非常に広いですが、次のような場合は使用を避けています。
先ず、道糸に伸びが全然ないPEラインを使う仕掛けにハリスがクッション(衝撃吸収)の役割をしてくれれば良い場合、トップウォータープラグのように水面で動くルアーを使う時のように仕掛けが沈んでしまうと困る場合、などです。このような場合はクッションが良くて余り沈まないナイロンラインが適しています。
面白いと言うかおかしいと言うか、オーストラリアの北部で人気の高いバラマンディ釣りはフロロカーボンリーダーを使うと全然釣れないと言われています。分けは分かりません。フロロカーボンラインのもっと少しの硬さの所為でしょうか、水中でよく見えないし丈夫だけどナイロンリーダーしか使っていません。
ケアンズのバラフィッシング

*エコロジーへの接近
 釣り場に捨てている釣りラインは公害の一つの原因になっています。さらに「環境破壊犯」と言う濡衣まで着せられている釣り人をマスコミはもっと窮地に追い込んでいます。言い過ぎじゃありません。釣り針を飲んだカモメのレントゲンや釣り糸に足が絡まっている鳥の写真、捨てたラインが網のように縺れている海底の写真などがよく登場しています。
 始めに書いたようにポリフッ化ビニリデンは化学反応の余り起こらない非常に安定された化合物です。即ち、普通は腐らない分解されないと言う意味です。フロロカーボンラインは一般的に短いハリスに良く使うので、もし使用の途中切られても道糸の切れた事よりは影響が少ないかも知りませんが、あまり短くても自然界で分解されなくてそのまま残っていると困るんでしょう。
もう殆どの釣りでハリスはフロロカーボンラインが当たり前です。摩擦に強くセンシティーブな特性でバス釣り、ロックフィッシュ釣りではリールの道糸でも使えています。
多量のフロロカーボンラインが川や海に捨てられると未来は暗いです。ナイロンラインは捨ててもOKと言う意味じゃ絶対ありませんが、ナイロンの場合、何十年が過ぎると分解されるかも知りません。しかし、フロロカーボンラインは千年が過ぎてもそのまま残っているので環境にもっと大きな悪影響になる事を忘れてはいけません。
分解されないから水質汚染はないじゃないかと言うのはあほの話です。

今日も釣り場で捨てられたラインを拾って、切れたラインをポケットに持って帰った貴方、孫に同じ場所で釣りの出来る機会をプレゼントしましたね。

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