フィッシングラインの科学(5):フライライン

非常に遅くなりました。「フィッシングラインの科学」の第5回です。
釣り糸の科学2回は、
釣り糸の科学3回は、
http://gt-exor.blogspot.com/2008/11/3.html
釣り糸の科学4回は、


釣り糸(フィッシングライン)対しての小考5
フライライン(Fly Line)

 一般的な釣り糸とはその形はもちろん機能、役割、素材などが全然違うのラインがあります。フライフィッシング用のラインです。
フライフィッシングは、疑似餌を使う釣りなので、広い意味ではルアーフィッシングの一種類だと見られますが、その生まれが元より違って普通のルアーフィッシングとは別として独特のジャンルにしています。タックルも兼用不許で他のジャンルのロッド、リール、ライン、フックなど全てが違います。
 他の釣りは重い鉛ウェイトやルアーの重さを使って仕掛けを遠いポイントまで投げるが、フライフィッシングはラインその物の重さで仕掛けをポイントまで投げます。なので、フライいラインは太くて重いのです。普通の釣り用のラインとは違ってフライラインは仕掛けを投げるための機能が主な任務です。

慣習単位を理解しよう
 単位(度量衡)に対しての問題は東洋西洋を不問して非常に複雑です。さらに同じ単位としても時代によって地域によってまた何を測るかによってその基準は千差万別でした。
フランス革命から世界的に広がった「メーター法」は1960年になってこそ「国際的単位系(Le Systéme International d´unités、SI単位系)」として統一され認められました。現代の殆どの国々と科学者達が一般的に使う単位です。しかし、実は慣習や偶然から来た単位体系が一緒に使われています。「尺貫法」と「インチーパウンド法」も使っているので複雑です。
アメリカの場合、まだ政府が度量衡体系を統制しようとする動きが全然見えません。他の国々は法令で国際的単位系を強引に使えるようにしているけど色々な面で不便が確かにあります。
長さ(距離)、重さの単位、特にスポースレジャーの場合、ロッド一つを見てもそうです。フナ竿のようなのべ竿は尺貫法が優先、ルアー・フライロッドはフィート(インチーパウンド法)を優先で使っています。
フライラインに対しての単位も同じです。慣習体系の単位が分からないとその内容も分かりません。
国際的単位系ではない単位が消滅しない理由は、これが昔からの長い慣習に定着している事と、その発生の元が人体だとか日常生活から来た物だからです。
科学的で確実な事実しか認めないようなイギリスとアメリカが意外に度量衡に対しては寛大だとはアイラニです。
もちろん、21世紀にこんなに適当に作った単位を主に使っていると話しているんじゃありません。もう国際的単位系に合わせて換算されています。<表1>参考
インチーパウンド法のような古代ヨーロッパが起源になる単位は、次のような面白い基準も多かったです。「度量衡の統一」がなぜ必要か一目で分かります。

*長さ単位
1ヤード=国王のウェイストサイズ
1ヤード=3フィート=12インチ
1インチ=小麦3個の長さ
1ロード=5.5ヤード=教会に出た16名の男性の左足の長さの合

*重さ単位
一般商人:1lb.=16oz.=7000グレイン
薬商人:1lb.=12oz.=5760グレイン
1グレイン=穂の真ん中に付いている良く干した小麦の粒の重さ

<表1>現代単位換算表
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西洋慣習単位         換算値
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1ft.              30.48cm
1inch             2.54cm
1lb.              0.4536kg
1oz.              28.35g
1グレイン(grain)        0.0648g

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フライラインの形と素材
 フライラインは一目で見ても普通の釣り糸とは違います。全体的な形は両方へテーパー(Tapered)が付く細くなる滑らかな紐のようです。
フライラインの形と各部分名

 17世紀「アイザック・ウォルトン(Isaac Walton)」の著書、「釣魚大典(Complete Angler)」にはテーパーの付いたフィッシングラインが登場するが、これが文献に初めて現れた現代的なフライラインの始まりと見ています。
当時のフィッシングラインは馬尾毛のような天然素材だったが、19世紀の頭には「シルク(絹)」がフライラインとして使えるようになりました。シルクで作ったフライラインには油やワックスを塗って防水性を高まって使ったそうです。現在は特別な目的のない限り、これを使う人はいないはずです。
化学樹脂の表面を持つスムースなテーパーの現代式のフライラインは1952年に初めて登場した(アメリカCortland社製造)と記録されています。
現代のフライラインは、今まで紹介したフィッシングラインとは全然違う素材と構造を持っています。断面を見ると真ん中に芯(コアー)があってその上を樹脂が被っています。
中央の芯の素材は普通のナイロン糸と見ても良い、その上にコーティングされるのはPVC(ポリビニールクロライド)です。ここに必要な性質(比重など)に作るためいくつかの添加物が入ります。水に浮くフライラインには細かい泡か中の空いたカップセル、沈むフライラインには比重の高めるため非鉄金属の粉などが入ります。

フライラインの断面

フライラインの規格
 始めに話したとおり、フライラインはラインの重さで仕掛けを投げます。なので、ラインとロッドのバランスが非常に重要でバランスが合わないと釣りそのものが出来ません。
フライタックルを作る製造社と商人達はフライフィッシングの特殊性を見て規格統一の必要性に対して目覚めていました。「ASA(American Sportfishing Association)」の前身である「AFTMA(The American Fishing Tackle Manufacturers Association)」でフライラインの規格を決めて消費者の釣り人が何処のメーカーのフライタックルを買っても使用にトラブルがないようにしています。
その内容は、フライラインの番数と重さに付いての事です。ラインの形と構造を問わずフライライン全てに適用できる事です。<表2参考>
フライラインは全体の長さが25~30ヤード位ですが、前の部分の10ヤード(30フィット、約9メーター)の長さだけを測って規格化したのです。どうしてライン全体じゃなくて前の10ヤードだけの重さを測ったかと言うと、当時の釣り場でフライアングラー達の平均キャスト距離が10ヤードだっらからだそうです。

<表2>フライラインの基準(単位:グレイン)
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AFTMA (番)   基準重さ及び許容量
  1        60±6
  2        80±6
  3        100±6
  4        120±6
  5        140±6
  6        160±8
  7        185±8
  8        210±8
  9        240±10
  10       280±10
  11       330±12
  12       380±12
  13       450
  14       500
  15       550
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フライラインの種類
 フライラインは「番」による重量で分ける他に、外形と比重でも分類します。

(1)外形分類
外形で分類すると基本的に4つに分けます。次々とフライフィッシングの領域が広がり様々な魚がターゲットになって行きながらウェイトフォーワードライン(WF)に新しく考案された形を追加しています。

フライラインの種類

<表3>外形による色んなフライライン
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名前と記号      特徴      備考
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レベル         テーパーのない    キャスティング
(Level) L         直線形     コントロールが難しい

ダブルテーパー     両端が同じ形で  渓流釣りに最適、
(Double taper)     細くなる      先端に傷が付くと
DT                   反対側に返して使える

ウェイトフォーワード   先端が太くて    技術的な面で次々と
(Weight forward)  重い形でもっと    色んな形の開発
WF         遠くまで投げられる

シュッティング    もっと遠くまでキャスト  シュッティングヘッド
テーパー       するように考案された  とも呼ぶ。2番レベル
(Shooting taper)   ラインでWFラインの  ラインかナイロンライン
ST          前ののテーパー部分  かPEラインを繋いで
          だけをカットした形   ランニングラインにする。
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WFラインのバリエーション
*バスバグテーパー (Bassbug taper) BBT
より前のほうに重い部分が短く偏っている。空気抵抗の大きな大型フライが投げ易い。

*ソルトウォーターテーパー (Saltwater taper) SWT
BBTと似ている。海つり用で開発

*ロケットテーパー(Rocket taper)
前に部分のテーパーが長い。スムースに遠距離キャスティングの出来る機能 。

*トライアングルテーパー(Triangle taper) TT
ベリーから前のテーパーまではスムースに一つの長いテーパーになっている。ロールキャスティングがもっと便利。

*ロングベリーテーパー(Long belly) LB
ベリー部分が普通のWFより長い。もっと遠くまでキャスティングできる。

*ウィンドテーパー(Wind taper)
前のテーパーの変更バリエーション。強い風の中でもキャストし易い。

*ボーンフィッシュテーパー(Bornfish taper)
ボーンフィッシュ釣り専用。

*その他、様々な専用テーパー

(2)比重分類
水に沈む速度による分類です。フライラインは水に沈む速度はメーカーより少し違う表現をしているが、内容は殆ど似ています。次の図と<表4>に表示します。

フライラインの沈降速度別分類

<表4>比重によるフライラインの分類
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タイプ   表記     沈降率
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
F     フローティング   水面に浮く
     (Floating)

F/S    シンクティップ   ティップ部分
     (Sink tip)      だけ沈む

S(1)   スローシンキング  非常にスローで沈む
     (Slow sinking)
      または、
    インターミディエット
     (Intermediate)

S(2)   ファストシンキング  2.5~3 inch/秒
     (Fast sinking)

S(3)   エキストラファスト   3.5~4 inch/秒
     シンキング
     (Extra fast sinking)

S(4)    ハイスピード    4.2~5 inch/秒
      シンキング
     (High speed sinking)
      または、
     スーパーシンカー
     (Super sinker)

S(5)    スーパーファスト  5.2~6 inch/秒
      シンキング
     (Super fast sinking)

S(6)     エキストラ    6.2~7 inch/秒
     スーパーシンカー
     (Extra super sinker)
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以上の分類方法をまとめてフライラインはケースや包装に統一された表示をします。次の例を見れば、そのフライラインの外形、番(重さ)、タイプ(比重)が一目で分かります。
<例> DT3F:ダブルテーパーの3番フローティングライン
WF8S(2):ウェイトフォーワード8番ファストシンキングライン


フライラインの未来
 最近、フライラインの発展に加速度が付いていると言うか、メーカーが物売りにしか興味がないと言うか、以前にはなかった特別な形のフライラインも多くなっています。
普通のフィッシングラインは消耗品として原料(素材)開発や後処理加工でもっと強い釣り糸を作ろうと競争しているが、フライラインは原料的な事ではなくて最終製品(商品)として外形による機能性を持つ新製品ばかり作っているんじゃないかと思っています。
ティップ部分を交換しながら他の目的にも使えるラインがあれば、ボーンフィッシュテーパー、ウィンドテーパー、スティールヘッドテーパー、などなど何かの「専用」という名前を付けて特別に見えるフライラインが次々と現れています。

フライフィッシングはどんどん発展してもう巨大なカジキもフライで釣る時代です。フライラインは、普通のフィッシングラインのように単純に細くて長い物じゃないので今からももっと多い変化が期待出来ると思います。
もし、いきなりの進化があれば、その時は慣習の枠を破る日になるかも知りません。

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